ビジネス英語:このコツさえつかんでしまえば超楽です!

長い長いビジネス英語メール

 私のかつての同僚に、毎回毎回、絶対と言っていいほど、読み手にスクロールを要求する長さのメールを送ってくるフィンランド人がいました。
 しかも、結論は最初どころか、最後にあるとも限りません。誰も彼のメールを読みたがりません……..。

 あるとき、私は業を煮やし、

“To make your very, very long story short, what is your ask?”
「それであんたの超、超長い話をまとめると、何がしてほしいの?」

と、彼のメールをほとんど読まずに返信しました。

 彼の次の返信の主張の部分は、なんと、3行にまとまっていました。

 別の相手で似たような経験をしました。

 非常に優秀な頭脳を持つため、インドのITでめきめき頭角をあらわし、グリーンカードをえてアメリカに済み、あるIT企業のCTOまで上り詰めたインド人を知っています。

 あるとき私は、三つの問題とそれへの対処法を尋ねる、6行のメールを送りました。

 信じられないかもしれませんが、そのメールに対して、そのCTOは、なんと50行以上のメールを返してきたのです。

 言うまでもなく、両方とも、全文英文です。

<通訳しやすいのはどちら?>
ウルトラ超人の自己紹介

 ビジネス英語を学ぶ上でとても重要な教訓を含む、ゲームをしましょう。

 あなたは、怪獣や宇宙人から地球を守る科学特捜隊に勤務しています。最近、外宇宙から襲来する宇宙人の数が増えたため、スーパーヒーローを一人、採用しようとしています。

 今日は候補者二人の面接です。自己紹介してくださいと頼んだら、それぞれの候補者は、以下のように答えました。

Milkeyway

<ウルトラマンの面接での自己紹介>

「M87星雲からやってきたウルトラマンと申します。

「40年前、不幸な事故でハヤタさんを死なせてしまったので、私と合体するすることで生き返らせ、地球に止まって、レッドキングやゴモラやアントラーとかと、それなりにいい感じで戦って撃退しました。ゴジラにエリマキつけただけのジラースとかもいましたね。

「ああ、そういえば、宇宙人をやっつけたいんですよね、今回は。バルタン星人とかもやっちゃいましたよ、わたし。ああいう根暗なやつは、たぶん、性格的に女の子にもてないと思います。一緒にご飯いっても箸持てないでしょうしね。

「私、世間ではスペシウム光線が必殺技だって思われてるんですけど、意外とね、使ってないんですよね、意外と。八つ裂き光輪のほうがフレキシブルなんで、個人的に使いやすいですね。ああ、そういえば、八つ裂きって表現が過激なんで、今は別名がついてるんですよ、知ってました?

「まあ最後は確かにゼットンにやられちゃっいました。はい、そのときはヘタレでご迷惑おかけしました。だけど、おかげさまで、挫折って大切だなって学びました。死んだ気になって頑張るって言いますけど、私、あんときゃ本当に一回死んじゃいましたからね、マジで。いや、つらかったー。

「というわけで、今回もいろいろ御社のために頑張れると思うんで、よろしくです。シュワッ!!

「ところで御社ってスポンサーどこなんですか?昔っから不思議なんですよ」

<ウルトラセブン面接での自己紹介>

「M87星雲からやってきたウルトラセブンです。40年以上、宇宙人を撃退するプロとして、銀河を股にかけて仕事してきました。

「ウルトラ警備隊に属して地球を守っていたときは、40体以上の宇宙人の撃退に成功しています。むろん、私のスキルと経験は対怪獣用としても使えますが、どちらかといえば、ずる賢い宇宙人と知恵比べをして勝ち、最終的には力技で撃退するのが得意です。

「主な必殺技は、アイスラッガー、エメリウム光線、ワイドショットの三つです。アイスラッガーは、私の頭に乗っているこれを投擲して相手を切り裂くもので、残りの二つは光線技です。いずれも実戦で威力は証明済みですが、お望みなら、のちほど使い分けを解説いたします。

「というわけで、今回の求人のニーズに最適の人材だと自負しております。よろしくお願いいたします。デュワッ!」

 あなたなら、どちらを採用するでしょうか?

 たとえ本当はウルトラマンのほうが強かったとしても、ウルトラセブンを雇いたくなりませんか?

 そしてそれは、なぜでしょうか?

 また、各人の自己紹介をあなたが通訳しなければならないとして、どちらのほうが訳しやすそうでしょうか?

スーパーマン vs. バットマン

 余談ですが、私はこのエピソードを日本人以外にするとき、
スーパーマン vs. バットマン
の構図に変え、スーパーマンに、

“I am faster than a speeding bullet, more powerful than a locomotive, and able to leap tall buildings in a single bound!”
「私は弾(たま)より速く、機関車より強く、たかいビルもひとっ飛びです!」

と自己紹介させて、「どう?わかりやすいでしょう?」ということにしています。

 ところが、
「バットマンの自己紹介がくどいのはありえない、彼は学者だからスーパーマンより頭が良いはずだ」
という指摘を、あるインド人のエンジニアから受けました(笑)。

 次回は、スーパーマン vs. スパイダーマンでやってやろうかと思っています。

ビジネス英語の面接に通る最大のコツ

 今度は本当にあった話です。私自身が、英語がペラペラの候補者に、中途採用面接で門前払いを食わせたエピソードです。

退場!

話が長すぎて「退場!」

 私が、課長レベルのマネージャの中途採用をしようとしていたとき、外資で取締役をしていらした方が、応募してきてくださいました。もちろん、英語もぺらぺらです。ありがたくももったいない話だなと思いながら私は面接を設定しました。

 私は、面接の冒頭で求人票の Job Description (やっていただきたいこと)とその背景(事業、プロジェクトの内容)を短く説明した後、
今回のハイアリングのニーズを踏まえた上で、ご自身の経歴を3分くらいでご紹介いただけますか?」
と、お願いさせていただきました。

 すると候補者は、驚いたことに、自分が大学を中退した理由から説明し始めたのです。その方は40代後半でしたので、もう20年も前の、しかも自分が働き始める前の話を、現役のマネージャを即戦力として中途採用したい企業の面接で、やおら話し始めたわけです。

 私がみるみる不機嫌になっていくのがわかった、と、後で、一緒に面接した同僚が後で言っていました。

「不躾(ぶしつけ)で申し訳ないですが、そんな昔の話から始めて、3分で職歴が説明できるんですか?我々も時間がないので、エレベーターステートメントでお願いできませんか」

 私は、自分でもつっけんどんとわかる口調で遮りました。彼は、エレベーターステートメントという単語をご存じないようで、キョトンとしています。

 その候補者の面接は30分未満で打ち切られ、結果は、もちろん不採用でした。私には、彼が外資で取締役になれたということが、正直、不思議で仕方ありませんでした。そのときまで、外資は pointed communication を好むものとばかり、思っていたからです。

 学生、中途採用問わず、日本人、外国人問わず、コンパクトにご自分の職歴のまとめられない方は驚くほど多いです。

 面接官は、この候補者は普段から、ご自分が
「なんによって記憶されたいか?」(ドラッカー)
を考えていないのだな、と評価してしまいます。

 転職活動をする方は、特に英語の面接では、この質問に答えるコンパクトな回答を用意しておくと、ほかの候補者と大きな差をつけることができます

外人の社長とエレベーターに乗り合わせてしまった
何を言いますか?

 エレベーターステートメントとは、相手の知りたい要旨だけを、手短に伝えるということです。

 エレベーターに社長と乗り合わせた。社長に、今の仕事の進捗を尋ねられた。社長が、社長室のあるフロアで降りるまでの数十秒内に、自分の手がけるプロジェクトの状況をクリアに分かってもらわなければならない。さて、何を言うべきか?

 私なら、今のプロジェクトのおおよその状況を green/yellow/red で伝え、その根拠としてKPIの値や進捗を示し、問題がある場合は、一つだけ共有し、そのインパクトと解決策を伝えると思います。

 エレベーターに乗っていられる時間はせいぜい2〜3分、それくらいでタイムアップでしょう。

 エレベーターステートメントは、以下の特質を持ちます。
(1) サマリ(要旨、まとめ)のみを述べる。
(2) 仮説思考で、「相手がもっとも関心を持つであろうこと」のみを伝える。その他の情報は全て捨てる。

 社長は何十件もイシューを抱えており、詳細から説き起こしたら、間違いなく、そんなことを聞いている時間はないと嫌がられます。

 だから、まずプロジェクトが順調かそうでないかを伝え、そうでない場合は、直面しているもっとも大きな問題を知らせ、それがプロジェクトの中で解決できそうかどうかをわかってもらうために、解決策を提示します。

 プロジェクト内で解決できない問題があるのなら、社長自身に出馬して解決してもらう必要があるかもしれないのです。私にプロジェクトを任せている社長にとっては、これらがいちばんの関心事のはずです。

 普段の会議でも、このエレベーターステートメントは重要です。

 たとえば一人が自分のステータスを報告するのに5分かけてしまったら、たとえば7人が参加する会議では、それだけでたっぷり
5分×7人=35分
半時間かかってしまいます。重要なポイントのみをコンパクトに伝えるエレベーターステートメントを使えば、有意義な議論に割く時間が浮きます。

 話をするとは、相手に聞く時間をさくことを強要する行為なのです。

 英語がペラペラだった上記のマネージャ候補者は、もしかしたら、今までの採用面接で大学を中退したことを指摘され、理由を述べた経験があったのかもしれません。だから予防線を張ったのでしょう。しかし、そんなことは、訊かれたら答えればいいのです。

 面接官から、はっきりと、

どんなマネージャが求められているのか?

という期待値を、面接の最初で与えられたにもかかわらず、彼はその人物像から最も関係ない遠い昔の経歴から話し始めることにより、自らのコミュニケーション能力の低さを面接官に印象付けてしまいました。

 そう、彼は英語はペラペラでした、にもかかわらず、マネージャとしてのコミュニケーション能力は低かったのです。

「ワンメッセージ」で、エレベーター·ステートメントを目指せ

 このページで申し上げたいことを、それこそ一口でうまくまとめている書籍があります。

 非常に参考になりますので、当該部分を引用させていただきます。

『商談でのプレゼンテーション。「五分で要点を話してね」と顧客が要求しているのに、10分以上かかる営業マンがいる。「三分だけお話を聞いてください」と言って大学病院の医師のところにやってきたのに、やはり10分以上かかっているMRがいる。

 営業マンやMRに限らず、こういう人は結構多い。

 私はこの手のビジネスパーソンに対しては、「今すぐ短くシンプルに話せるようになるために、トレーニングを始めなさい」と言いたい。

 なぜか。話が長いということは、ムダが多いということである。ムダが多いということは、本質に到達するまでの手間がかかるということである。こうした人たちは質問の際にも、いったいなにが聞きたいのかが一向に見えてこない、ダラダラした質問をしがちである。』

野口吉昭著「コンサルタントの質問力」

コンサルタントの「質問力」 (PHPビジネス新書)

コンサルタントの「質問力」英語を学ぶ前にこの本の内容をしっかり踏まえておくと、非常に楽です。

英語で報告する:上司に対してと 彼女に対して では話す内容が違う

 ではなぜ、ワンメッセージがなかなかできないのでしょうか?

 一つ目の原因は、聞き手の期待値を調整しないで、いきなり内容、しかも、詳細に飛び込むことにあります。

 ようするに、相手がメインにアドレスしている部分をわきまえられていないのです。だから、もってまわった英語をアウトプットすることになります。

 以前、プロジェクトマネージャとしては新人のインド人に、自社の経営陣に対して、プロジェクト全体のステーテスレポートをさせたら、いきなりいま抱えている技術的問題の背景から報告しはじめ、あわてて止めたことがあります。ちなみに、彼の報告は、英語です。
(彼は、MIT以上に入学、卒業が難しいとされる、インドの超一流大学を優秀な成績で卒業しています。)

 相手の関心事項を確認せずに、細かいところから語り始めるのは、これも英語以前に、大変問題があります。むしろ、英語が流暢であればあるほどやっかいです、細かい説明が止めどなく出てきますから……汗。

 勝間和代氏は、自著の中で、マッキンゼー時代の自分の話がわかりにくかった原因を、以下のように分析しています。

①相手の理解度を確認しないまま、また前提条件を説明しないまま、いきなり内容に入る
②話す内容が、フレームワークになっていない

効率が10倍アップする新・知的生産術

効率が10倍アップする新・知的生産術(自分のビジネス英語のチャンクを相手と合わせたいとき参考になります)

 ここで着目したいのは、①です。

 最終的に勝間氏は、まずは相手の理解度を確認してから、どこから説明すべきかを考え、話し始めるようにして、自分の話のわかりにくさを矯正したと言います。

『下記の2点を心がけたところ、言葉の質が大きく改善し、わかりにくいとはいわれないようになりました。

相手がどれくらいわかっているのか。相手の理解度はどこまでなのか。相手にどこから説明すべきなのか。相手のレベルをよく理解して、まずは共通のイメージを捉えてから説明する

②ロジカルに分解して、説明するクセをつける。それは「空・雨・傘」でもいいし、よくコンサルタントがいう「3つあります」でもかまわない』

(前掲書より、太字はこのブログ筆者による。)

  最初に取り上げたプロジェクトマネージャも、
「(プロジェクトの)調子はどうですか?」
と訊いてきた相手によって、返答を変えるべきでした。

1. お客様に訊かれたら:
「順調です。納期に影響のある問題は今のところありません。」
(技術的な問題が解決できることに自信がある場合、お客様に対して言及するべきではありません。
いたずらに不安を煽るだけです。)
“It has been all OK, no issue which could cause a delay.”

2. 技術がわからない上長に訊かれたら:
「概ね順調です。技術的な問題は一つありますが、解決のめどはたっており、納期や品質に影響はありません」
“The overall status is green. We have a technical problem, however, we have found out how to fix it. It would have no impact on the release or the quality.”

3. 技術がわかる同僚に訊かれたら:
「概ね順調です。……という問題があり、……という方法で解決できると思っています」
“The overall status is green. We have a technical problem such as…. However, we will be fixing it soon through this way….”

4. 彼女に訊かれたら:
「忙しいけどまあまあ順調だよ」
“Well, i am bit busy, but it has been OK.”

 4. の彼女に、3. の回答を返したら、どうなるでしょうか?こんな映画の冒頭で、まさにそんな会話をするシーンが出てきます。ちなみに主人公は、その場でフられます(笑)。

ソーシャル・ネットワーク (字幕版)

ソーシャル・ネットワーク

 話す相手の理解度によって、チャンクを合わせない限り、流暢な英語をしゃべっても、相手が混乱するばかりなのです。

 まずは “The overall status is…”と、マクロステータスを述べるやり方は、相手が誰であっても、必ず有効な方法です。

 また、見逃しがちですが、上記の例文のように、こまめに読点「。」period “.” をはさんでいくことも重要です。
「……ですが、……であり、……となるため、……」
と、えんえん句点ばかりのメールをときどき見かけますが、これもまた、相手の期待値にアドレスしていない証拠です。

 相手の関心事にアドレスできる人間なら、最初の読点までの短い文章で、一気に自分の主張をコンパクトにまとようとするはずだからです。

占い師がコンサルタントを動かしてしまった理由

 野口吉昭氏 は、「コンサルタントの質問力」の続編としてものした「コンサルタントの解答力」という本の冒頭で、氏が自分の会社を起こしたばかりに出会った、氏の人生をある意味大きく変えてしまった占い師について記しています。

 この占い師の提言は、もちろん、エレベーターステートメントにはなっていませんが、
「相手の関心事にアドレスして話す」
ということについて、非常に参考になるエピソードです。

 氏は、占い師が起業したばかりであることを全く知らずに、それを知っての上でのアドバイスとしか思えないことを言ってきたことに、
「よく感じとれるものだな」
とまずはすっかり感心します。

『しかし興味深いのは、その先である。そのとき占い師は、次のようなアドバイスを私にしてくれた。
 
「今まで好き勝手に生きてきたことを自制して、親を大切にしなさい」「感情に流されやすいから気をつけなさい」「お金に足元をすくわれないようにしなさい」「人の話を素直に聴く習慣をつけなさい」
 
 私はこのアドバイスに深く納得し、それを心にとどめて経営をしてきた。それが成功のすべての要因というわけではないにせよ、私を支えてきたものの基本であることは、事実だった。その結果、占いでいわれたことの多くを、実際に実現することができた。
 
 だが、今考えてみれば、後半のアドバイスはなんともありきたりというか、誰に対しても当てはまるものばかりである。しかしこのときの私は、妙に納得してしまったのだ。
 
 それは、占い師が相手軸(つまり私の側)に立ったうえで、私がどのような心理状態にあり、どのような意識変革を望んでいるかを敏感につかみ取っていたからだろう。
 
 自覚があったわけではないが、私がこの時期に占いに行ったというのは、心のどこかに迷いがあったからかもしれない。迷いがあるから占いをしてもらうのだろう。こうした不安や迷いに対して、自分の選んだ道は正しく、ただ、同時に足元を見つめることも大事だという「意識変革」を占い師は迫ったのだ。
 
 だから私は「親を大切にしなさい」とか「感情に流されないようにしなさい」「人の話を素直に聴きなさい」といったよくあるアドバイスを、まさに自分だけに向けて発せられたアドバイスとして受け取ったのである。』

(太字はこのブログの筆者)

コンサルタントの「解答力」 (PHPビジネス新書)

コンサルタントの「解答力」

 ビジネス英語はコミュニケーションですから、
「卓越したリスニング能力を持つこと」
「流暢に話すこと」
「きれいに発音すること」
自体が目的では、全くありません。
 どんなに語学に秀で、ペラペラ英語を話そうと、その言葉が相手の心に届かずに上滑りしてしまったら、なんの意味もないのではありませんか?
 自分が言葉を発して、それを相手が聞き取って咀嚼し、その結果相手に自分の期待するアクションをとってもらって初めて、
「聞き手にコミュニケートさせた」
と言えるのです。

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